死亡保険金の税金は受け取り方が違う。仕組みをわかりやすく解説
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万一のことが起きたとき、死亡保険金はお墓の購入やお葬式、死後の整理、残された家族の生活などさまざまな用途に使われます。そんな死亡保険金には、税金がかかるのでしょうか。
この記事では、死亡保険金の受け取り方や契約形態によって変わる税金の種類について解説します。
満期保険金や解約返戻金にかかる税金についても知りたい方は、こちらの記事もあわせてご確認ください。
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死亡保険金の受け取り方
大切な家族に万一のことが起きたとき、悲しさで何も手につかなかったり、お葬式などの慌ただしさに追われてしまったりするかもしれません。しかし死亡保険金は自動的に支払われるものではないため、遺族から保険会社に連絡を入れ、受け取りの手続きをしなければなりません。どんな保険に加入しているのか、家族間で伝え合っておくようにしましょう。
また、保険会社に提出する書類の準備も必要です。もしものときに連絡を忘れてしまうことがないよう、事前に保険金請求の手続きの流れや担当者の連絡先を確認しておくことが大切です。
受け取り手続きの流れ
保険金の受け取り手続きは以下の流れになっています。
ステップ1:保険会社に連絡する。
保険の契約者(保険料を支払っていた人)、または保険金受取人が保険会社に連絡し、保険金請求書類を取り寄せる。
ステップ2:書類が届く。
保険会社から、請求に必要な書類のリストと保険金請求書が発行される。
【準備が必要な書類の一例】
・被保険者(保険の対象になる人、死亡保険金請求の場合は亡くなられた方)の住民票
・保険金受取人の戸籍謄本
・保険金受取人の印鑑証明
・死亡診断書や死体検案書
・保険証券
ステップ3:請求手続きを行う。
保険証券に記載されている受取人が保険金の請求手続きを行う。
ステップ4:保険会社の支払い可否を待つ
各保険会社は、約款で支払い期限を定めています。保険金が期限経過後に支払われるような場合には、保険会社は遅延利息を支払う義務があるので支払い期限を必ず確認しましょう。
(受取人が遅延利息の受け取りを目的として不当な理由で確認を遅らせた場合には遅延利息は支払われません)
【支払い期限の一例】
・原則5営業日以内
・各所への確認が必要な場合は45日以内
・弁護士法など特別な確認が必要な場合は180日以内
ステップ5:死亡保険金を受け取る
一時金で受け取るか、保険金の一部か全額を年金で受け取る「年金受取」か、所定の利率で保険会社に据え置く「据置」を選択できることがあります。
死亡保険金にかかる税金の種類(所得税・贈与税・相続税)
死亡保険金を受け取るときには、所得税・相続税・贈与税のいずれかの課税対象となります。契約形態と受け取り方法によって、税金の種類や税金額が変動するのでしっかり把握しておきましょう。
【契約者・被保険者・受取人の関係性による税金の種類(例)】
保険契約者 | 被保険者 | 死亡保険金受取人 | 税金の種類 |
夫 | 妻やこども | 夫 | 所得税 |
夫 | 夫 | 妻やこども | 相続税 |
夫 | 妻 | こども | 贈与税 |
所得税
保険契約者(保険料を支払っていた人)と保険金の受取人が同一人物の場合、受け取り方法によって一時所得、または雑所得として課税対象となります。
【一時所得になる場合】
死亡保険金を一時金で受け取った場合は、一時所得となります。
死亡保険金以外に一時所得がない場合、受け取った保険金の総額から、それまでに支払った保険料や掛け金を差し引き、さらに特別控除額(最大50万円)を差し引いた金額の2分の1の金額が課税対象となります。特別控除は、死亡保険金の金額から保険料や掛け金を差し引いた金額が50万円以下の場合、その残額が控除額となります。
【雑所得になる場合】
死亡保険金を年金として受領する場合は、公的年金以外の雑所得になります。
受領する年の間に受け取った年金の総額から、その金額に対応する払込保険料や掛け金を差し引いた金額が課税対象となります。また、年金を受け取る時には、原則として所得税が源泉徴収されるので把握しておきましょう。
相続税
被保険者(亡くなった方)と保険契約者(保険料を支払っていた人)が同一人物の場合、受取人には相続税が課されます。受取人が、亡くなった方の相続人である場合には「相続によって取得」となり、相続人以外が受取人となる場合には「遺贈により取得」と判断されます。
贈与税
被保険者(亡くなった方)と保険契約者(保険料を支払っていた人)、保険金の受取人がすべて異なる場合、贈与税が課されます。
保険の契約関係で変わる税負担の具体例
ここでは、被保険者である夫が亡くなった場合を例にして、契約形態による税負担の違いを具体的に解説します。
【case1】被保険者(夫) ✕ 契約者(夫) ✕ 受取人(妻or子)
所得税 | 相続税 | 贈与税 |
✕ | 〇 | ✕ |
保険の対象である被保険者が夫で、保険料を支払う契約者も夫の場合、家族の誰かが死亡保険金を受け取るときには、相続税が課税されます。
【case2】被保険者(夫) ✕ 契約者(妻) ✕ 受取人(妻)
所得税 | 相続税 | 贈与税 |
〇 | ✕ | ✕ |
保険の対象である被保険者が夫で、保険料を支払う契約者が妻、保険金の受取人が妻の場合には、所得税が課税されます。受け取り方によって一時所得か雑所得となるので受け取り方をしっかり判断しましょう。
【case3】被保険者(夫) ✕ 契約者(妻) ✕ 受取人(子)
所得税 | 相続税 | 贈与税 |
✕ | ✕ | 〇 |
保険の対象である被保険者が夫で、保険料を支払う契約者が妻、保険金の受取人が子の場合には、贈与税が課税されます。
死亡保険金の非課税枠とは?
死亡保険金を受け取り、その保険金が相続税の課税対象となる場合には「500万円×法定相続人の数」分の非課税枠が存在します。このとき、相続を放棄した人や相続権を失っている人は、法定相続人とは認められません。
例えば、夫・妻・子2人の家族で夫が亡くなったとき、妻+子2人が法定相続人となります。
死亡保険金が3,500万円の場合、
非課税枠・・・500万円×3人=1,500万円
課税対象額・・・死亡保険金3,500万円-非課税枠1,500万円=2,000万円
となります。
死亡保険金は残された家族が今までとおりの生活をできる限り維持するためなどに使用されるケースが多いお金であるため、税負担の一部が免除される仕組みとなっているのです。
この非課税枠はあくまでも「相続人」が死亡保険金を受け取った場合にのみ使用できるものです。例えば相続人に該当しない孫が死亡保険金を受け取ったときには、非課税枠を使用することができませんので受取人の指定時には注意してください。
(豆知識)法定相続人の中に以下に該当する人がいる場合はご注意を!
①相続を放棄した人がいる場合
非課税枠は相続人の税負担を軽くするための仕組みなので、相続を放棄した人がいる場合でも、その放棄はなかったものとして非課税枠の額を計算するときの「法定相続人の数」に含むことができます。
ただし、相続を放棄した本人が死亡保険金を受け取る場合には、そもそも非課税枠が適用されません。
②相続権を失っている人がいる場合
相続権を失っている人は非課税枠の「法定相続人の数」に含むことができません。
また、相続権を失っている人が死亡保険金を受け取る場合には、非課税枠を適用することができません。
③養子
法定相続人の中に養子(普通養子)がいる場合、非課税枠の「法定相続人の数」に含めることができる養子の数には限りがあります。法定相続人に実子がいるときは養子1人、実子がいないときは養子2人までです。
いざという時に役に立つ!?死亡保険金に関する〇✕クイズ!
もしものとき、慌てずに対応できるように死亡保険に関する知識を少しでも学んでおきましょう!ここでは、○×クイズ形式で死亡保険に関するお役立ち情報を紹介していきます。
死亡保険金は、相続放棄しても受け取ることができるの?
答えは〇です。
死亡保険金は契約上、受取人の固有財産とみなされるので相続財産とは異なります。そのため、相続放棄した場合でも生命保険金を受け取ることができるのです。しかし、契約内容によっては、放棄してしまうと受け取れないこともあるので契約内容は必ず把握しておくようにしましょう。
死亡保険金の使い道は決められているの?
答えは✕です。
保険金の使い道は自由です。修理費用などが支払われる損害保険の場合は使い道が決められていますが、死亡保険は残された家族が今までとおりの生活を維持するためや、こどもの学費など、その活用方法は自由です。
生命保険には必ず税金がかかるの?
答えは〇です。
生命保険で受け取るお金には、税金がかからないものもあります。例えば、入院給付金や手術給付金、先進医療給付金など「不慮の事故や疾病などにより受け取る給付金」は所得税法施行令第30条第1号によって、非課税と決められています。しかし、死亡保険金の場合は、被保険者・契約者・受取人の関係性によって所得税・相続税・贈与税のいずれかの課税対象となります。
受取人の指定のない死亡保険金も支払われるの?
答えは〇です。
この場合、法定相続人が受け取り対象者となります。契約している保険の内容によって決められていますが、ほとんどの場合がこのケースです。法定相続人とは、民法で定められた相続人で、配偶者となります。配偶者以外の親族は以下の順番で相続人となっていきます。
1位・・・子
2位・・・直系尊属(父・母・祖父母など自分より前の世代の直系の親族)
3位・・・兄弟姉妹
また、受取人が先に亡くなっており、受取人の変更が行われていない場合も法定相続人が受取人となります。このように、受取人の指定がなく法定相続人に死亡保険が支払われる場合には、法定相続人全員に均等に保険金が割り振られます。
死亡保険金を受け取るためには請求する必要があるの?
答えは〇です。
死亡保険金は、被保険者が亡くなったから自動で支払われるというものではありません。受取人となっている人が保険会社に請求することで、支払いを受けることができます。受取人以外には、保険金を請求する権利が認められていないので、請求手続きは必ず受取人が行いましょう。また、請求には期限があり、亡くなってから3年が経過している場合には請求権がなくなり、保険金が受け取れなくなるので注意が必要です。
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